これは『私』の、幸せに関する物語だ。
『りょうすけ、左利きなのに、包丁、右手で使うんだ!!』
昨日の夜、いちよんさんに言われた。今さら感が半端ない!!つなかんに来て3年目に言うことか?適当さとか、とりあえず見たことを、言葉にする感じとか。いちよさんは、今日もいちよさんだった。
そんな3月10日の夜。
3月11日は何を書こうか。
ずっと考えていた。去年はいちよさんに、話を聞いた(これもぜひ、読んでください!!)。
つなかんのこれから、とか。日々、どんなことを考えているか、とか。
今年も同じことをしようかとも、思ったけれど、なにを聞けばいいだろう。
去年は、ここに書けないような、ゴタゴタがあって、ブログ自体もそんなに更新しなくなってしまった(ありのまま記とは言えども書けなかった笑)。
みんな、それを、ひきずっていた。だから、いちよさんに何を聞いたらいいかわからなくて、そのまま放って置いたら、あっというまに3月になってしまった。
3月1日の朝、いちよさんと、旦那のやっさんの写真を撮った。今年の春も牡蠣の通販をやる予定で、それに使うために。デジカメのモニターをチェックすると、今年、伝えたいことが、そこに写っていた。
写真のタイトルは、その日の午後、走っていたら思いついた。
『アー・ユー・ハッピー?』
これは、矢沢永吉さんの本のタイトルだ。『成り上がり』の続編。極貧の幼少期から、ロックンローラーを志し、一気にスターダムにのしあがった永ちゃん。矢沢流の『成り上がり方』を書いた本だ。その続編のタイトルが『アー・ユー・ハッピー?』である。『成り上がり』は、成り上がりという言葉の説明として、本の文章をそのまま全部、辞書に載せてもいいくらいの『ザ・成り上がり』な内容なのだけれど、続編は、それに比べると、タイトルから、本の内容は想像しずらい。
『アー・ユー・ハッピー?』を 読んでいくと、サラリーマン人生を2周しても返せないくらいの借金を抱えた事件があったりと。成り上がった先でも、幸せがずっと続くわけじゃないことを知る。
『なんだよ、永ちゃん。成り上がった先も、大変な事ばっかじゃねーかよ。俺たち、永ちゃんに夢みて大丈夫なのかよ』と思えるくらいの、重い出来事が書かれている。
それでも、読み終えると『アー・ユー・ハッピー?』という永ちゃんの問いかけに、自分がどんな状況でも『イエス、オフコース!』と言わなきゃいけないな、と思えるようになる。言葉ではなく、永ちゃんがやってきたことの説得力たるや!
まぁこれは、永ちゃんの物語ではなく、東北の物語、いや、『私』の物語なので、永ちゃんの話しはこれくらいにしよう。
震災から、5年経った去年までは、いわば東北にとっての『成り上がり』期だったと、僕は考えるようにした。
永ちゃんが過ごした極貧の子ども時代のように、全てを失い、マイナスからのスタート。そこから、どうやって、どういう気持ちで、事業を再建していったのか。
ハーバード大学の学生たちも注目した、その『成り上がり』感。
なぜ、諦めなかったのか。なぜ、そう考えたのか。なぜ、そんな行動ができたのか。
なぜ、なぜ、なぜ。
『why?トウホク、ピーポー!!』
いままで、沢山の『なぜ?』に対するこたえに、ずっと応えてきたように思う。
盛屋水産で言えば、震災後の新たな事業として、民宿つなかんをスタートして、ちょっとした話題にもなったし、牡蠣の養殖も震災前のように、収穫できるようになった。
『イカダがひとつもなくなったこの場所で、もう一度、牡蠣をつくるぞ。』『残された家を使って、民宿を始めよう』そんな気持ちでの『復興』期があって。今は、その時に必要だった集中力とは違い、長い道のりを走る時のような持久力で、仕事をしている感覚だ。
今は、『復興』とかそういうことばでは、くくれない、ずっとずっと続く日々を過ごしている。永ちゃんの本でいえば『アー・ユー・ハッピー?』の時期に突入した。
『アー・ユー・ハッピー?』
それは
『あなたは、幸せですか?』ではなく、
『あなたも、幸せですか?』という、
『私』が幸せだから言える、問いかけ。
(2017年3月10日つなかんにて。)
そして、それは、ここで出会う、たくさんの『私』が、幸せになるための物語。
あれから6度目の3月11日。東北、気仙沼、唐桑から送るメッセージ。
アー・ユー・ハッピー?
おわり。
いろんなご縁があって、今年もここで過ごせること、感謝申し上げます。
また、ここでお会いしましょう。
唐桑御殿つなかん料理長 今井竜介。